📌 プロジェクト概要
全国に存在する約73万橋(道路橋)のうち、建設後50年以上が経過する橋梁は年々急増しており、 維持管理コストの増大が深刻な課題となっている。 海外公開オープンデータと定期点検実績を組み合わせ、橋梁・部材単位の健全度劣化曲線をAIで自動生成するシステムを開発中。 維持管理計画の合理化・予算最適化に貢献することを目的としている。
01背景と課題
国内の橋梁インフラは高度経済成長期に大量に建設されており、老朽化問題が深刻化している。 5年に1度の法定点検で得られる健全度データは蓄積されているものの、「個々の橋梁が将来いつ危険な状態に達するか」を定量的に予測する手法は確立されていなかった。
橋梁の材種(PC橋・RC橋・鋼橋)や架設環境(海塩分、凍結防止剤、交通量など)によって劣化スピードは大きく異なるため、 一律の劣化曲線では実態に合わない。そこでAIによる材種別・環境別の個別予測に取り組んでいる。
02学習データと分析
橋梁年齢と健全度スコアの長期的な関係を統計的に分析し、材種別・環境別の劣化トレンドを橫断的に可視化する。 下図はそのイメージをAIで作成したコンセプト図である。

図1:橋梁デジタルツイン ─ 点検データと構造モデルを統合し、健全度の経年変化をリアルタイムに把握するコンセプトイメージ。
03AI手法:LSTM × PINN ハイブリッド
単純な回帰モデルでは補修・補強工事による健全度の回復(V字回復)をうまく扱えない。 そこで2つのアプローチを組み合わせたハイブリッドモデルを採用した。
時系列パターン学習
Long Short-Term Memory ネットワークにより、過去の点検履歴シーケンスから 劣化の時系列パターンを学習。補修履歴の影響も含めて予測する。
物理制約による合理化
Physics-Informed Neural Network により、健全度は単調減少するという 工学的制約をモデルに組み込む。データが少ない橋梁でも物理的に整合した予測を実現。
04予測結果のイメージ
材種別に学習したモデルを用いて、各橋梁の将来の健全度推移を予測する。 赤破線(健全度スコア50)が要対策レベルの閾値であり、 このラインをいつ下回るかを予測することで、補修時期の計画立案を支援する。

図2:AI劣化予測イメージ ─ LSTM+PINNハイブリッドモデルにより、材種別(PC / RC / Steel)の健全度推移を予測するコンセプト。
全管理橋梁に対して予測を一括実行し、 「今後5年以内に要対策レベルに達する橋梁・部材のリスト」をCSV形式で出力。 維持管理予算の重点配分や中期計画の策定に直結するアウトプットを提供する。
05今後の開発ロードマップ
公開データを用いたプロトタイプ構築
国内外の公開データを活用したモデルの初期検証完了。材種別(PC/RC/鋼)の劣化傾向を学習。
部材レベルへの細分化
橋梁全体スコアから「主桁・床版・橋脚・支承」など部材単位の予測へ精度向上。
補修履歴の組み込みと出力システム
補修によるスコア回復の処理、全橋梁一括予測のCSV出力機能を実装。実務との連携を実現。
